私事で恐縮だが、日本で暮らすようになってからいつの間にか6年もの月日が経過した。正直な話、母国フランスにいた頃よりも充実した日々で、ホームシックなどという厄介者とは無縁な生活をおくっている。そんな大好きな日本にいて、折りあるたびに絶望感を余儀なくさせられるもの…それが日本の一般的なメディアのあり方なのだ。その内容の未熟さや倫理の欠如など、ともすれば中国と並んで(中国では4年間の居住経験あり)の劣悪さだ。Akihabara Newsだけでなく、自動車産業関連(NihonCar.com、ManualGear.com)における巨大なジャーナリズム界の一隅で活動をしてきた僕だけに、これまでに何度となくその顕著な例に直面してきたものである。
典型的な一例が昨日見つけたこの記事。日本国内でもその規模・活動ともに業界トップの日経が運営する情報サイト、「Tech-On !」に掲載されていたものだ。
実は、「Tech-On !」がApple社に対して辛口記事を掲載するのは初めてではなく、過去の『MacBook Air』を取り上げた記事などは印象に残っているかもしれない。(関連ニュースは
こちら)
ご丁寧に円グラフまで添えられたこの記事の見出しは「Survey: 91% of Japanese Will Not Buy 'iPhone'」。日本新発売となるiPhoneだが、バッテリーの交換不可という致命的な欠点がネックとなり、日本では到底売れないだろというものだ。
確かにバッテリーの交換ができないというのは、理解に苦しむ設計ではある。とはいえそれを一番の理由にあげて、91%もの日本人がiPhoneを買うつもりはないとしている、という結論を出してしまうのは少し焦燥ではないのか?
ところで、このアンケート、一体どのような条件で実施されたのか?「Tech-On !」によると「日本国内におけるiPhoneの販売者ソフトバンクモバイルの依頼を受け、リサーチ会社iSHAREが実施したもので、20歳から49歳までの402人のインターネット利用者を対象に、iPhoneの購入に関する意図を調査した」らしいのだ。420人? インターネット利用者? 乱暴な言い方で申し訳ないが、なんだよそれ、子供だましか??
1)信用できるアンケート結果を得るためには、調査対象は少なくとも1000人単位で実施するべきだ、というのはどこのビジネススクールでも教えている常識だろう。さらに、今回のアンケートでは、この1000人単位という基本的な条件を満たしていないだけでなく、調査の対象となったのはインターネット利用者のみという点も指摘されるべきだ。Cookiesの消去、IPアドレスの偽造、メールアドレス・名前の偽造などなど、とかくインターネット上でのアンケートには慎重にならざるをえない要素が溢れているからだ。
2)402という数値を具体的に検証してみよう。2008年5月の時点で、日本国内における3Gフォン利用者は実に89,525,000人を数える。日本3位のシェアをほこるソフトバンクモバイルの利用者だけでも、14,806,000人いるのである。さらに、日本の総人口は1億2,700万に上る。そのなかで402人というと…
・日本の3Gフォン利用者(8,900万人)の約0.00045%
・ソフトバンク利用者(1,400万人)の約0.0027%
・日本の総人口(1億2,700万人)の約0.00032%
にしか過ぎないのだ。果たして携帯電話利用人口の0.00045%を対象としたアンケート結果を、確かなデータとして認めていいものなのだろうか?
iPhone発売を3週間後に控えた今現在、Apple・ソフトバンクモバイル両社による製品に関する正式発表はいまだ行われていないことも強調しておきたい。この状況で、消費者が本当に買いたいと思っているのか、という調査をする意義はどこまであるのか大いに疑問が残るところである。早速、上記の2社に電話で発言を求めたところ、現時点では何も答えられないという判を押したような答えが返ってきただけだった…声を大にしていいたい! たかだか0.00045%の利用者の意見を調査しただけで、91%の日本人が購入する意図がないとしているなんてことを言い切っていいのか?
一辺倒の歪んだ情報を発信するよりも、真のジャーナリズムとは何か、真剣に取り組みなおすべきではないのか! Tech-On!、ひいては日経関係者に心から問いかけたい。
文・だいまおう(日経派に煙たがられることは覚悟の上だ)